大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)825号 判決

そして、被控訴人と訴外児玉との間における請負契約について被控訴人主張のように本件建物の所有権がその完成と同時に被控訴人に帰属する旨の特約があつたことを認めうる何等の証拠も存在しない本件においては、訴外児玉は本件建物完成によりその所有権を取得し、更に被控訴人は右児玉から前記認定の日に引渡を受けてその所有権を取得したものというべきである。

(中略)

更に、被控訴人は、仮に右契約解除の意思表示が効力を生じないとしても、前同様の理由で昭和三九年一二月一五日付準備書面により控訴人に対し本件賃貸借契約の解除の意思表示をする旨主張する。

〔証拠〕によれば、控訴人は訴外石橋より本件建物を買受けてその所有権を取得したと主張する昭和三七年四月二五日より以前、既に訴外石川寛の紹介により被控訴人との間において本件建物の賃貸借につき話合が進められていたものであるところ、右買受だと主張する日に被控訴人を貸主として本件建物を賃借することゝなり、同日被控訴人に対し四月分の賃料として金一〇、〇〇〇円を支払い、その後五月にも分割払でその賃料の一部を支払つていることが認められ、(中略)

そして、右認定の事実からすれば、控訴人としては当時、本件建物は被控訴人の所有であることを当然の前提として、被控訴人との間において前記賃貸借契約を締結するに至つたものと認定するを相当とするところ、〔証拠〕によれば、控訴人は本件建物を賃借した直後である昭和三七年七月頃に至り、被控訴人に本件建物の所有関係について確める等の方法も採らないで、一方的に本件建物は控訴人が訴外石橋から買受けその所有権を取得したと主張し、被控訴人の本件建物の所有権を否定して、賃料を支払わず、更に、被控訴人の知らない間に予め準備していた建築証明書(乙第八号証の二)に右事情を知らない訴外石橋の捺印を求めるとともに、同人の妻から印鑑証明(乙第八号証の三)を買い受け、他方、自ら内容虚偽の上申書(乙第八号証の五)を作成したうえ、これらの書類を添付して東京法務局杉並出張所に対し本件建物の建築申告をなすとともに所有権保存登記の申請をなし、その結果、被控訴人主張の保存登記がなされるに至つたものであることがそれぞれ認められ、(中略)

このように、賃借人である控訴人において、右認定のような経過を辿り賃貸人である被控訴人に対し本件建物についての所有権の帰属を争い、賃料の支払はもとより賃借人としての義務の履行をすべて拒絶する態度を示すに至つたことは、もはや、本件賃貸借契約における信頼関係が、その根底において破壊され、控訴人においてその後の賃貸借契約の継続を著しく困難ならしめる不信行為があつたものと解するを妨げない。従つて、かゝる場合には被控訴人が催告をすることにより控訴人において信頼関係を復旧することは到底不可能であること明白であるから、被控訴人としては何等催告を要しないで契約解除をなしうるものといわねばならない。

(牛山 今村 長西)

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